天然ガスの不足や価格高騰が引き金となり、ヨーロッパを中心として電気代の値上げが人々の生活を苦しめています。
発電の75%以上を火力発電に頼っている日本は、火力発電の燃料(原油、液化天然ガス(LNG)、石炭など)のほとんどを海外からの輸入に頼っており、世界規模で起きている天然ガス不足・価格高騰は必ず大きな影響をおよぼします。
今回の記事では、東京電力と契約している家庭の電気料金が、天然ガス不足・価格高騰の影響を受けこの先どのように推移していくのかを見ていきます。
電気料金の仕組みを理解した上で平均的なサンプルを使い、今後の電気代の値上がりをシミュレーションします。
この記事を読むと、次のようなことが分かります。
✔ 電力会社との契約形態により値上げの影響が異なるのが分かります。
✔ 東京電力の電気料金の仕組み・計算方法が分かります。
✔ 自由料金契約で電気料金がこの先どれ位値上がるかが予想できます。
✔ 電気料金値上げを想定して今とれる対策が分かります。
是非最後までご覧ください。
大切な人を守るために「将来に備えること」を日々探究している50代の「あり~な」がお伝えします!
目次
契約形態によって今後の値上げの影響が全く違う
一般家庭が加入する東京電力の契約形態には「自由料金」と「規制料金」があります。
それぞれの違いは次の通りですが、まずは自分の家がどちらで契約しているかをきちんと確かめておく必要があります。
契約形態によって、今後の電気料金値上げの影響が全く違ってきます。
自由料金 | 規制料金 | |
概要 | 2016年に始まった電力自由化以降に選べるようになった料金形態 | 2016年以前の料金形態 |
契約名 | スタンダードS スタンダードL | 従量電灯A、B、C |
電気料金構成 | 基本料金+電気量料金+再エネ賦課金 | 同左 |
特典 | ポイント付与 生活駆けつけサービス | なし |
燃料費調整単価 | 上限なし | 上限あり |
「規制料金」は2016年の小売自由化後は撤廃される予定でしたが、低圧の契約となる料金プランでは、消費者保護のための経過措置として現在も存続しています。
値上げに大きく影響するのは、燃料費調整単価の上限の有無
電気料金の仕組みについては次の章で説明しますが、電気料金値上げに影響するのは「燃料費調整単価の上限の有無」です。
上のグラフは東京電力の自由料金(上限なし)と規制料金(上限あり)の燃料費調整単価の推移を示したものです。
規制料金(上限あり)を示す青線は、2022年9月以降5.13円で横ばいになっています。
これは上限を超える部分の金額を利用者ではなく東京電力が負担していることを表しています。
一方、自由料金(上限なし)を示すオレンジ線は、2022年9月以降も6.5円、8.07円、9.72円とぐんぐん上がっています。
自由料金には上限がないため、燃料費調整額が値上がりした分すべてを利用者の請求額に上乗せされていることを表しています。
上限がある「規制料金」の契約では上限を超えて燃料価格が上昇しても、利用者の電気料金には転嫁されません。つまりその超過分は電力会社が負担することになり経営を圧迫することになります。今回の燃料価格の高騰は異状であり、この先この上限がどのようになるかは不透明です。料金改定申請がなされ基準燃料価格が見直された場合、燃料費調整単価の上限が変更されることも考えられます
東京電力の電気代計算方法
まず最初に電気料金の計算方法を説明します。
基本的に自由料金も規制料金も同じ計算方法で、電気料金は「A基本料金+B電力量料金+C再エネ賦課金」で計算されます。
B電力量料金では「B-1従量料金」に「B-2 燃料費調整額」がプラスマイナスされますが、この金額が現在どんどん上がっています。
A 基本料金は契約毎の定額ですが、B 電力量料金とC 再エネ賦課金は利用者が使った電力量(使用量Kwh)によって変動します。
それでは1つずつ説明します。
A 基本料金単価
「基本料金とは」、東京電力が契約プランごとに定めた固定料金です。
家庭で使う電力の契約は、自由料金の場合「スタンダードSもしくはL」、規制料金の場合「従量電灯BもしくはC」となります。
いずれの場合でも、基本料金は契約するアンペア(A)数によって異なります。
自由料金、規制料金おそれぞれの契約における基本料金を紹介します。
ここでは分かりやすくするために、一般家庭の多くが加入する契約(自由料金は「スタンダードSプラン」、規制料金は「従量電灯Bプラン」)のみ記載します。
見た目は違いますが、アンペア数に対する基本料金はどちらも同じ金額です。
【自由料金:スタンダードSプランの基本料金】
アンペア(A)数 | 料金(税込) |
10Aにつき | 286円 00銭 |
【規制料金:従量電灯Bプランの基本料金】
アンペア(A)数 | 単位 | 料金(税込) |
10A | 1契約 | 286円 00銭 |
15A | 1契約 | 429円 00銭 |
20A | 1契約 | 572円 00銭 |
30A | 1契約 | 858円 00銭 |
40A | 1契約 | 1,144円 00銭 |
50A | 1契約 | 1,430円 00銭 |
60A | 1契約 | 1,716円 00銭 |
B 電力量料金
B-1 従量料金
「電力量料金」とは、使用した電力量に応じて計算される変動料金のことで、電気を使えば使うほど高くなります。
従量料金は三段階で料金設定されており、自由料金でも規制料金も同じ金額になっています。
段階 | 範囲 | 単位 | 料金(税込) |
第1段階料金 | 最初の120kWh迄 | 1契約 | 19円 88銭 |
第2段階料金 | 120kWhを超え300kWh迄 | 1契約 | 26円 48銭 |
第3段階料金 | 上記超過 | 1契約 | 30円 57銭 |
もし仮にその月の電力使用がなかった場合でも「最低月額料金(1契約あたり235円84銭)」が請求されます
B-2 燃料費調整額
「燃料費調整額」とは、電気を作るために動かしている火力発電所の仕入れコストを利用者が負担する額です。
火力発電では、原油、液化天然ガス(LNG)、石炭などの燃料を使いますが、日本はそのほとんどを海外からの輸入に頼っています。
燃料調整費単価は輸入価格の変動に応じて増減します。
燃料費調整額は「利用者の電力使用量(kWh) × 燃料費調整単価」で計算されますが、最近は輸入燃料費の値上がりや円安の影響でかなり高騰しています。
燃料費調整額の全額を利用者が負担する契約が「自由料金(上限なし)」で、上限を超えた分を東京電力が負担してくれる契約が「規制契約(上限あり)」です。
C 再エネ賦課金
「再エネ賦課金」とは、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」により電力会社等が買取りに要した費用を、電気利用者が電気の使用量に応じ負担する金額です。
2022年の単価は3.45円/kWhと決まっています。
自由料金(上限なし)での電気料金シミュレーション
ここまで説明したとおり、燃料費調整単価に上限がある「規制料金」ではこれ以上の価格高騰はありませんが、上限がない「自由料金」は燃料費調整額の値上がりで大きな影響を受けそうです。
ここからは燃料費調整単価の値上がりで「自由料金」がどの程度の影響を受けるかをシミュレートしてみます。
シミュレーションの前提条件
多少古いデータになりますがTEPCO(東京電力ホールディングス)の資料「家庭1件あたりの使用量と契約電力」のデータを参考として、次の条件でシミュレーションを行います。
1. 家庭1軒あたりの使用量は、220kWhで試算
【TEPCO 家庭1軒あたりの使用量と契約電力(当社サービス区域1ヶ月平均)の数字を元にグラフ化】
2015年時点の使用量平均248.7kWhを参考に、シミュレーションは「1件あたりの使用量=220kWh」で行います。
2010年の東日本大震災以降、電気使用量は毎年下がってきたようです。データのない2016~2022年はさほど下がりはないと想像しましたが、今回の電気代値上げの影響で節約する家庭もあると想定し220kWhとしました
2. 家庭1軒あたりのアンペア数は、40Aで試算
【TEPCO 家庭1軒あたりの使用量と契約電力(当社サービス区域1ヶ月平均)の数字を元にグラフ化】
2015年時点の平均アンペアが34.88kWhであることを参考に、シミュレーションは「スタンダードSプランの40A契約」で行いました。
シミュレーション結果 ①:現状(2022年10月)の平均的電気代
契約アンペア | A 基本料金 286円/10Ax4 | B 電力量料金 (参考参照) | B’ 燃料費調整額 220kWh x 8.07円※1 | C 再エネ賦課金 220kWh x 3.45円※2 | 合計 2022年10月 |
40A | 1,144円 | 5,033.6円 | 1,775.4円 | 759円 | 8,712円 |
※1 燃料費調整単価8.07円/kWhは2022年10月時点の数字
※2 再エネ賦課金3.45円/kWhは2022年の数字
【「B電力量料金」5,033.6円の計算内訳】
段階 | 使用量220kWhの内訳 |
第1段階料金 最初の120kWh迄 | 120kWh x 19円88銭 = 2,385円60銭 |
第2段階料金 120kWhを超え300kWh迄 | 100kWh x 26円48銭 = 2,648円 |
合計 | 5,033円60銭 |
シミュレーション結果 ②:今後値上がりした時の電気代
輸入している火力発電原料(原油、液化天然ガス(LNG)、石炭など)が今後も値上がり続けることを想定したシミュレーション結果です。
2022年10月時点で8.07円の燃料費調整単価が10円、15円、20円、25円と上がった場合、1ヶ月の使用電力量がこれまでと変わらず220kWhだとしても電気代はこのように値上げされます。
契約アンペア | 現状の電気代 単価 8.07円 10月時点 | 調整単価 10円になった場合 | 調整単価 15円になった場合 10月の約2倍 | 調整単価 20円になった場合 約2.5倍 | 調整単価 25円になった場合 約3倍 |
40A契約の 電気料金/月 | 8,712円 | 9,136円 | 10,236円 | 11,336円 | 12,436円 |
差額 | 0 | +424円 (+4.9%) | +1,524円 (+17.5%) | +2,624円 (+30.1%) | +3,724円 (+42.7%) |
自由料金の契約から規制料金の契約に変更する相談が、東京電力には多く寄せられているそうです。東京電力も「燃料価格高騰に伴う自由料金プランの燃料費調整額について」で自由料金プランから規制料金(従量電灯Bなど)への変更が可能なことを通知しています。但し記載の通り、使用状況によっては割安にならない場合もありますのでご自身の契約や使用状況をよく確認した上で検討ください。
まとめ
今電力会社と結んでいる契約の形態によって、今後さらに激しくなる電気代高騰の影響が全く違います。
電力を作る火力発電所の仕入れコスト(原油、液化天然ガス(LNG)、石炭など)の増加が「燃料費調整額」に反映され、利用者の電気代の値上げにつながります。
「燃料費調整額」を算出する燃料費調整単価に上限のある「規制料金」での契約ならまだ良いのですが、上限のない「自由料金」で契約している場合は、電気代の更なる値上げは避けられません。
家庭1軒あたりの平均使用量(220kWh)、平均アンペア(40A)を使って、東京電力の自由料金契約の電気代を試算した結果、燃料費調整単価の値上がり具合で、電気料金がどの程度値上がりするかが分かりました。
契約アンペア | 現状の電気代 単価 8.07円 10月時点 | 調整単価 10円になった場合 | 調整単価 15円になった場合 10月の約2倍 | 調整単価 20円になった場合 約2.5倍 | 調整単価 25円になった場合 約3倍 |
40A契約の 電気料金/月 | 8,712円 | 9,136円 | 10,236円 | 11,336円 | 12,436円 |
差額 | 0 | +424円 (+4.9%) | +1,524円 (+17.5%) | +2,624円 (+30.1%) | +3,724円 (+42.7%) |
今後しばらくは電気料金の値上げが続くことが予想されますので、できる限りの対策を早めにとることが必要になります。
【電気料金値上げを想定して考えられる対策】
・電気の契約を「自由料金」から「規制料金」に変えることを検討する
・日常生活の中でなるべく電気を使わない工夫(省エネ・節電)をする
・電力消費量の新しい省エネ家電に買い替える
・ソーラーパネルなど無料で電気を作れるエネルギー源を確保する